月の如く
少年は死んだ
死んだはいいものの、誰にも知られずに死んだ
また、自分が死んだということに、少年自身ですら気づいていないんだった
なぜかと言えば、なにも変わっていないからだ
果たして、それは死といえるのだろうか
そして逆に、今までは生きていたといえるのだろうか
だが、しかし、変わったことを述べてみるとすれば
少年は夢を見なくなった
そして、明けることを忘れた夜が来た
出会いと別れが月日とともに流れ
少年は数々の談笑に溺れても、心を満たされることはない
仲間だと思っていた人たちに突き放されようと、心残りなどありやしない
少年は、その場その場で笑顔を飾っては、心はうつろなまま
ここまでたどり着いて、少年はやっと気づいた
――僕、死んでたのか・・・
そう、少年は、死んでたということに、気づいた
だか、しかし、これといって慌てる様子は見られなかったし、涙を零す予兆すらなかった
なぜなら、少年は死んでたからだ――からっぽな心を患って“死んでた”――
――そうか、僕は、幸せも、愛も、求めることを、諦めていたのか
少年はそんな自分に慣れてしまった、そんな独りの世界に慣れてしまった
また、灰色の世界に慣れてしまった
慣れきって、深淵に身を投じようとしたそのとき
いつものように交わしてきた「はじめまして」は少年の心に特別な味を与えている
これからさらなる深い眠りへと沈もうとしていた少年の心でも、さすがにその特別な味に惹かれずにはいられなかったようだ
少年の凍てついた心に光が差し込んできた
その光のもとに近づくほど、遅くなりつつある少年の時の流れは、一気に速くなっていった
気づかないうちに、少年の心は満たされている
満たされて、ついに、とっくに忘れていたはずの感覚が蘇ってきた
溢れている――
零れている――
抑えることなど、自分自身を殺めるのと同じ
確かに一度“死んで”はいたが、ここに来て自分を殺すことに、意味を見いだせない
そう思いながら少年は、差し込んできたその光に自分の心の中身をさらけ出すことを選んだ
その光に、その焔に、呑み込まれることを選んだ
――甘い、甘くて、少しだけすっぱい
――なんだか不思議な味だ、生まれて初めて知った味だ
やがて少年の心は、その彼女のものとなってしまった・・・
月の如く僕の暗い世界を照らしてくれる
ただし、月と違って
君はいつだって僕のためにいてくれる
君は僕の心を温めてくれる
君の心は近くにいる
そんな君は、僕だけの月、僕だけの光、僕だけの焔
そして
僕の心は、君のものだ
僕の正気も、僕の狂気も、君のためにある
愛しているよ
君を誰にも渡さないから
そしたらまた、たくさん「エモだよそれはぁ〜!」しましょ〜!